舞台役者 尾道絵菜さんインタビュー~後編~

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――もし役者になろうとかダンサーになろうとなった時に、勿論作品を見たりワークショップにいったりとかいうことは必要だと思うんですけど、実際になってみて『なる前は気付かなかったけどこういうことも必要なんだな』ってわかったことはありますか? 例えばさっき言った社交性もそうだと思うんですけど。

「社交性がまず一番で、これもそこに含まれるのかもしれないけど、どれだけ技術があっても人間性が合わないと仕事にならなかったりします。 礼儀云々みたいなものができているのは当たり前だし、どれだけダンスが上手くても芝居が上手くても挨拶ができない人には仕事は来ないし、そんなことはこの世界を知る前からわかっていたんですけど、実際にそういう現場を目の当たりにして『磨くのは技術だけではいけないんだな』って思ったりとか、技術を磨いてる人っていうのはそういうところを努力できる人なんだなとかいうことを知ったりとか。 後は何が正解で何が間違いかというのが明確ではない世界なので、努力の仕方も一つじゃないし、これができれば正解でこれができなければ不正解、これができれば合格でこれができなければ不合格ということではなくて、技術を磨くことは大前提だけどそれだけではだめで、見極める力がなければ活かせない。見極める力とどこで何が求められてるかをわかった上でちゃんとその瞬間に引き出せる能力というものは必要だと思います」

――どう表現しようとか、その表現を読み取るために意識していたりすることはありますか?

「意識してること……ですか」

――表現するには、理解しなきゃいけないってことですよね? それはどうやったらわかるというか……つかめるものなのでしょうか?

「ダンスの場合は今やっている活動で全部同じ先生に付いているんですね。 20歳くらいのときからなのでもう4~5年、ずっとついている同じ先生の作品に出続けているうちに、なんとなく『こういうことがしたいんだな』というのがわかったんです。 やっぱりダンスなんて言葉じゃ表現できないし、こういう感じって言っても私の見ている赤とあなたの見ている赤が一緒とは限らないっていうことがすごく実感としてわかるのがこういう芝居とかダンスとかを一緒にやってるときかなって思って。 抽象的なものを表現していく中でどうやったらわかるかっていったら、ダンスに関して言えば私の場合は共にした時間と経験した作品数だったかなっていうのと、後はダメ出しされることかな? 週3回のレッスンに先生が一人でいて、個人というものはレッスンを受けている大勢のうちの一人でしかないから、90分やって一度も声をかけてもらえないことってやっぱりあるんですよね。でも私はダメ出しでいいから、褒められなくていいから声をかけてもらいたくて、絶対早く行って一番前で踊ったし名前を覚えてもらうように特に最初の頃は努力をしたし、話しかけたりとかして。 その先生は無難にこなしてる人には何も言わないんですよ。そうではなく何か得ようとしたり、何か一ついいものにしようとして、失敗してバランスを崩しても今できる一番いい状態より一つ先をやろうとしている人にしか助言をしないんです。長年そのクラスを受けてきてそのことに気付きました。 今出来る技術で一番かっこよく踊れるというようなやり方をしていては褒められもしないしダメ出しもされない。それよりも何か一つでも自分の中で気を付けてやっていることとか努力して挑戦してみたこととかがあると、よく気付いてくれてアドバイスをくれるし、こういう風にしてみてもいいよって言ってくれたりもするし、声をかけてもらって初めてこの先生はこの振付に対してこういうものを求めているんだろうなって言うことが、小さい振り一つに関してだとしても情報を得られるような感じ。まず思うようにやってみて、何も言われなければちょっと違うことをしてみてっていうことの繰り返しかな」

――それは探るために、ですか?

「芝居も同じで、レッスン中にA4サイズ2ページくらいの台本を渡されて、じゃあ10分後に見せてって言われてやってみたら、可もなく不可もなくと言われたことが何度かあって、それは表現者としては不可だっていう風に言われていたので。 話として通ってるし、全然見ていられるけど、面白くない。それは私が無難なところでやっていたからであって何も挑戦していなかったらから。セリフが飛んじゃっても話が噛み合わなくなってもちょっと何か工夫を加えてみると、それに対して助言をしてくれるので、見る人が何を求めているかを探るヒントになるんです。 教えてくれる人が何か言いたくなるような、注意でもなんでもしたくなるようなことをする。 どうにか怒られないように、何もケチをつけられないようにって思ってしまうと何も引き出せず、何もわからないままに終わってしまうので、なんでもいいから言ってもらえるように、間違っててもいいから色々なものを試してみる。同じ芝居を同じ台本を3回やれって言われたら3回とも違うようにやってみるとか」

――そのダンスとか舞台とか色々活動している中で、どれが一番楽しいとかそういうのってありますか?

「一番っていうのは難しいですけどさっき言った『生きてるな』っていう実感があるのはダンスの時です。 それは、感情だけじゃなくて体も酷使している……息も絶え絶えになって最後の力を振り絞ってっていうことをするのはダンスのほうが多いから、そういう瞬間はダンスのほうが楽しい。 でも一番心が動くのは舞台の時だし、一番仕事として、自分のキャリアとして終わった時にやってやったって思うのは映像の時ですね」

――ありがとうございます。 最後に、これから役者を目指したいっていう方に何かアドバイスなどありますか?

「まずやってみることですね。やりたいなって思ってるだけだとやりたいままで終わってしまうというか、将来本当に役者としてやっていくかどうかは別として、やりたいと思っているのであれば何かしらオーディションを受けてみるなりワークショップに行ってみるなり、動いてみることが大事だと思います」

――なるほど!ありがとうございました!

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独特の感性を持ち、とても強い意志を持った現代に生きる大和撫子、尾道絵菜さん。 ご両親の反対もあり、この道に進むのは遅かったようですが、そんなものを感じさせない熱意を感じました。 10代後半~20代で芸能の道を志していたり、そんな道を志しながらもご両親の理解をなかなか得られない方は、尾道さんの生き様に勇気づけられるのではないでしょうか。今後、尾道さんの舞台やダンスの出演情報はこちらに告知いたしますので、ぜひ実際に尾道さんの舞台を観てみてください!

尾道絵菜さん

尾道絵菜さん、ありがとうございました!